研修修了者の実践例

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病院主任 大手 恵さん

所属施設・部署 公益社団法人脳血管研究所 附属美原記念病院
修了した特定行為区分 ・呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
急性期患者の状態変化の判断の迷いをきっかけに研修受講へ

当院は189床の脳血管疾患専門のケアミックス型の病院です。入院患者は脳・神経疾患の患者が多く、最近においては、複数の疾患を抱えていることが特徴です。現在、勤務する急性期病棟の在院日数は、8日と短くなっています。
当院に勤務して14年目で、病棟主任を担っていますが、急性期病棟で求められることや、急性期患者の状態変化に関する判断に迷いを感じ、課題を抱えていました。その時に、ちょうど、当院で特定行為研修がスタートすることがきっかけとなり、第1期生として受講を決めました。

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研修修了生は看護のロールモデルに

臨床経験を積んだ後に、基礎からフィジカルアセスメントや臨床推論を学びなおすことは、とても新鮮でした。特に通常の勤務を続けながら学習でき、すぐに実践に生かせることは、一番良かったことです。
研修修了後は、障がい者病棟の患者の気管カニューレ交換を院内の修了者6人が交代で、週に1回ペースで行うこととしました。また、3か月に一度、研修センター長や看護部長、修了者による定例会議を開いて、①特定行為実績報告、②医療事故の再発防止に向けた提言などの共有、③院内の気管カニューレに関するインシデント・アクシデント報告内容の共有、④事例検討、⑤手順書の見直しなどを検討し、活動評価を行いながら、きちんと安全を担保したより良い活動となるよう取り組んでいます。
また、当院の研修は、アセスメント能力と看護実践能力の向上を目的に実施しているため、研修後は勤務する病棟で看護のロールモデルとして、研修で学んできたことを現場で実践しながら、スタッフとより良いケアを探ったり、カンファレンスなどで解決策を一緒に考えるよう取り組んでいます。

※これらの活動の成果をまとめて、平成30年度に学会発表を行っています。
大手恵ほか;実践報告 中小規模病院における特定行為研修修了看護師の活動とその効果。
全日本病院協会雑誌.Vol.30.p.218-222

特定行為を看護実践に生かしていくことが大切

特定行為研修をうけて、手順書に基づいて気管カニューレの交換ができるようになりましたが、実際にこの患者さんにできるのか、できないのかを判断する能力もつきました。技術を誤ると死に直結する怖さも併せて学んでいます。主治医が交換をして良いというからでなく、自分自身の見極める力としても、アセスメントが生かされていると感じます。
また、特定行為の実践では、気管カニューレの交換は、特定行為のみに目が向きがちですが、その行為が看護の延長線上にあることを忘れてはならないと心掛けています。例えば、「どのように気管切開を意思決定したのか」、「現在、どんな状況か」など、患者の背景を捉えて特定行為を実施することが看護だと思います。修了者による交換は、「食事やトイレの時間を気にしなくていい。交換がうまかった」と患者の満足度は高いです。
特定行為研修は現場の実践に生かしていくことが一番重要だと思います。これからも、実践と自己研さんを積み上げていきたいと思っています。