管理者向け情報

仕組みについて、保健師助産師看護師法の規定を正しく理解することが安全のために不可欠です。また法律だけでなく、省令や通知などにも、様々に規定されていますので、全体を通して確認するとよいでしょう。詳しくは、本Webサイトおよび厚生労働省Webサイトをご覧ください。

修了者の組織内での役割や活動方法については、各施設で検討し、作り出していくことが必要です。
そのためには、施設の機能や患者・利用者の特徴、医療スタッフの配置状況などを踏まえ、施設のニーズに応じて、自施設では修了者にどのような役割を期待するかの検討が重要です。
法令上の規定を踏まえ、すでに他施設で活動している修了者の役割等も参考に、自施設のニーズに合わせた活動について、関係者で検討しましょう。

まずは、この制度の目的を確認しましょう。この制度は「資格取得」を目的とするものではありません。研修を受けることで、よりタイムリーに特定行為を実施できるようになります。
保健師助産師看護師法などを確認し、また厚生労働省のリーフレットなども参考に、制度の目的・概要・法律で定められている内容などの正しい情報を得て、受講を検討する準備を行いましょう。

特定行為研修を受けることで、修了者には臨床推論力・病態判断力などが獲得され、患者さんの状態を見極め、タイムリーな対応を可能にすることなどが期待されています。
今所属している施設の医療・看護の提供状況や、患者・利用者のニーズなどを踏まえ、研修を修了することで、どのようなことが実現できそうでしょうか。
この研修を受講する前に、具体的に実現したい活動や解決したいニーズを検討しておくことが、修了後の活動を有効にするために不可欠です。
受講の目的と修了後の活動イメージは丁寧に整理しましょう。

活動の修了後に、施設・利用者・患者のニーズに合った活動を行うには、所属施設の関係者が、修了者がどう活動するかを共通認識して、体制整備をすることが不可欠です。
研修を修了しただけで、「役割」や「成果」が自動的に生まれるわけではありません。
事前に検討していた受講の目的や必要性を、管理者に伝え、研修受講と修了後の活動について、充分に相談をし、修了後の活動について準備を進めながら、受講準備も進めましょう。

修了者が役割発揮するためには、部門での合意だけではなく、組織的な合意形成が重要と指摘されています。
研修派遣の前に、看護部もしくは診療部門だけでなく、施設の各部門・関係者が、修了者の活動について共通認識を持つことが必要です。

研修修了後は、修了者には組織内で新たな活動を作り上げていくことが求められます。
派遣者の選定にあたっては、実践の経験だけでなく、新たな活動を作り出していく役割を担えるかどうか、という観点も必要でしょう。
協働する医師や多職種、部署の管理者など、さまざまな人々と調整しながら、活動を作り出すことを想定して、人選をすることが重要でしょう。

研修機関を選定するには、行われている研修の「特定行為区分」のほかに、「研修機関の理念」「研修期間」「研修の指導・支援体制」「研修の方法（e-ラーニング導入の有無など）」「実習の方法（自施設実習か否かなど）」「研修機関外の受講者の受入状況」など、様々な情報から検討するとよいでしょう。
就業を継続しながら研修受講をする場合が多いので、就業と研修のバランスが取れ、無理なく研修を受講できるよう、そして修了後の活動につながる学びが得られるよう、研修機関を選定しましょう。　

就業を継続しながら受講する場合は、受講中の身分保障についての、検討・準備が必要です。　例えば、研修日の取り扱いだけでなく、e-ラーニングの受講時間の取り扱いなどがあります。また、研修受講料だけでなく、交通費や宿泊費などの負担などの経済的な取り扱いについても検討が必要です。
さらに、自施設実習の場合、実習時間中はどのような位置づけとするかや、実習と業務の区分の方法も検討をしておきましょう。

修了後に研修を生かして活動をするためには、研修前に十分に検討・準備することが不可欠です。
まず、以下のことについて、管理者とよく検討しましょう。

• どのようなニーズに対応するために研修を受講するか
• 研修修了後には、どのような活動を行うか（現在の配属部署での活動か、配属部署が変わるのか、部署横断的か。施設外も含めた活動か　など）
• 上記を踏まえ、何をどこで研修を受講するか（受けられる特定行為区分や実習の方法、研修の方法などから検討）

この研修では、通学・e-ラーニング・実習など、さまざまな研修方法が組み合わされています。研修期間を通じた、自分の動き（スケジュール）についてイメージしましょう。仕事と研修受講を無理なく続けるには、予定を立てて、勤務や生活の調整をすることも重要です。
管理者と相談し、研修（通学）と勤務の調整をどうするかや、eラーニングで学ぶ時間の確保など、検討を進めましょう。また、実習が自施設での実習であるかどうかも、踏まえることが必要です。
研修機関によっては、募集要項等に、受講のスケジュールを示しているところもありますので、参考にしてください。

研修期間中に、所属組織では、修了後の円滑な活動実施に向け、準備を進めていただく必要があります。
そのためにも、所属組織には定期的に、研修の進捗状況の報告をしたり、修了後の活動体制の整備に向けた相談を行うなどが必要です。
所属組織から初めての研修受講の場合は、研修制度そのもの組織内での周知・理解促進も必要なため、密に報告を行っていくようにしましょう。

修了後の役割・活動について、研修中の受講者や研修機関に指導者などとも情報共有をはかり、組織としてより具体化していくことが必要です。
その上で、元の配置部署でよいのか別の部門に配属するか、活動時間を特別に確保するのか日々の活動の中で役割発揮をするのか、など、修了者の配属について検討を進めていきましょう。
また、手順書の作成体制や指導体制、活動の評価や課題の共有をするための体制など、安全管理体制についても準備を進めましょう。
組織横断的な活動をする場合も含め、業務の調整や労務管理をだれが担うのかなどの体制整備も検討が必要です。

厚生労働省の通知においては、「実際に患者に対して特定行為を行う前に、当該特定行為に係る知識及び技能に関して事前の確認を行うこと」が安全に行うためには望ましいとの記載があります。また、この研修は自己研さんを継続する基盤を構築するもの、と位置付けられています。
このように、研修修了後に活動を安全かつ効果的に進めていくためには、指導体制や自己研さんへの支援が必要です。ここには、日々の業務での指導と、定期的な指導・評価が含まれるでしょう。
協働する医師と、修了者の活動イメージを共有しながら、具体的な修了者の活動の相談・支援体制を準備していきましょう。　

活動が始める前の段階としては、患者・利用者に先立ち、施設内の職員全体への周知が必要です。
施設内での周知の方法としては、所属長会議等を通じた部署単位での周知や施設内で多職種の参加する研修会や会議等での説明などが考えられます。
そのほかにも、制度や活動について施設内掲示やリーフレット等の配布も有効でしょう。
また、組織の異なる医師等の理解と協力が必須である訪問看護事業所等では、自施設だけでなく地域の医療従事者への周知も不可欠です。

研修修了後の活動について、施設の管理者と相談を進めましょう。
実際の講義や実習の受講を踏まえ、まず研修終了直後はどのような活動・体制から始めていくかを検討することが必要です。
新たな活動を始めるにあたっては、周囲の理解を得ることが重要です。施設内の職員は、まだ、特定行為研修制度や修了後の活動について十分に知識や情報がないかもしれません。
活動開始前に準備をすることも重要ですが、修了後にともに活動することを通じて、理解や協力が得られ、活動がさらに進むことでしょう。
そのため、まずは、安全に無理なく活動が開始できるよう、最初の体制や活動の在り方について、管理者とともに検討しましょう。

修了後の活動を始めるにあたっては、これまで行っていなかった「手順書による特定行為の実施」などを、安全に行えるよう体制を整えることが必要です。
また、業務を実施する際の指導・相談体制を整えておくことは、自分の安心・安全と患者・利用者の安心・安全の両面から重要です。これらの体制は個別の関係性における構築ではなく、組織として位置付け、整えられることが大切です。
施設の管理者に、修了後の活動における相談体制を整えることを依頼・相談しましょう。

活動の周知には、研修派遣中に行ってきた「制度の周知」だけでなく、修了者の活動の周知が大切となります。修了者の活動報告会を施設の職員全体に行うことは、修了者の活動を具体的にイメージして理解をすることが促進されると考えます。
また、患者・利用者の方に向けては、院内掲示やHP等での広報活動、同意取得時の患者・家族への説明等があります。
さらに、地域の医療従事者に向けても、修了者の活動を周知することは、地域の資源としての修了者の活躍の推進につながります。

事前に検討していた活動体制で、期待している役割発揮ができるかを確認しながら、活動体制や活動調整を行っていく必要があります。
手順書の作成や医師との連携については、修了者だけで行うことはできず、医療安全も踏まえた手順書作成に関わる委員会等を設置し、医師への協力要請や調整をすることが重要でしょう。

特に研修修了直後の支援は重要です。事前に指導・相談体制を構築していても、それが十分に機能するように、医師への協力要請や、実際の指導・教育体制が機能しているかの確認が必要でしょう。
また、施設で初めての修了者の活動であれば、新たな活動を管理者と修了者で作り上げていくことが求められるため、悩みや困難を把握し、解決に向けた支援を行うことが大切です。
支援については、研修機関に相談しながら行うことも有効でしょう。

特定行為研修制度は、まだ身近に修了者がいない施設も多いでしょう。そのため、多くの医療関係者・患者・利用者は、制度そのものについても情報が少ない状況です。
活動を行うときには、仕組みや自身の活動について、周囲の理解を得られるよう、丁寧に説明・周知を行っていきましょう。
日々の活動の中で協働する医師や看護職・メディカルスタッフの理解を進めていくことと、管理者と相談して施設内外で活動の報告会等を行ったり、周知用のリーフレットを作成するなどの周知活動と、両面で進めていくことがよいでしょう。
さらに、医療職だけでなく、患者にも理解を得られるよう丁寧な説明が必要でしょう

修了者の組織内での役割や活動方法に決まった形があるわけではありません。修了後の活動は、施設のニーズに合わせて、作り出していく必要があります。
自施設にはどのようなニーズがあり、どのような活動が可能か・有用かについて、施設全体での検討が必要です。すでに研修受講前から検討を行ってきたことと思いますが、修了者自身も、実際の活動を始めたのちも、提案をし、活動の構築に積極的に関わっていくことが必要です。

活動を始める前に、相談体制や安全管理の体制等が、施設内で検討され、整備されていることと思います。
実際に活動を始めてからも、その体制で安全にかつ効率的・効果的な活動が実施できるか、ということを評価をすることが大切です。
組織の管理者とともに、活動体制の構築をひきつづき進めていきましょう。