研修修了者の実践例

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在宅総施設長 勝部猛彦さん

所属施設・部署 社会福祉法人寿光会
特別養護老人ホーム・ケアハウス・居宅介護支援事業所・グループホーム りんどうの里
修了した特定行為区分 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
感染に係る薬剤投与関連
血糖コントロールに係る薬剤投与関連
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連
住み慣れた場所での生活を続けたいという思いに応えたい

研修を受講したのは、特別養護老人ホーム(以下特養)に勤務して9年目でした。
特養で勤務を始めたころ、病院と違い医師が常駐しない環境で、看護師としてどう活動できるか戸惑いがありました。利用者の健康状態に目を配り、早期に状況変化に気づいて対応することが、施設に常駐する唯一の医療職である看護職の重要な役割です。しかし、特養の利用者は、複数の疾患を抱えている上、医療的ケアの必要な方や認知症の方が増えています。早期介入で生活維持を図ったり、利用者の症状から、緊急受診するか施設で経過を見るかを判断するには、看護師の高い能力が必要となります。
このままでは、利用者や家族の「住み慣れた施設での生活を続けたい」というニーズに応えられないとジレンマを感じていた時、厚生労働省のWEBサイトで本研修を知りました。脱水時の補液など、今の施設で必要なことや、専門的な知識・技能を学び利用者の状態を見極める能力を身に着けたいと考え受講しました。

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特養で求められる看護とは

研修を受け、「いかに行為をしないようにするかが大切」と考え方が大きく変わりました。研修前は、これまで出来なかった診療の補助行為をできるようになりたい、と思っていましたが、研修中「自施設でこの研修を利用者にどう生かすか」と教員に問われ続け、何十時間も考えました。その結果、利用者の状態を判断し、食事や生活を整え、補液も最小限にして生活を維持させることのほうが、実は特養の利用者にとって重要であり、それは看護師がアセスメント力や臨床推論の力をつけることで実現可能だと、特養で必要とされる看護や自分がすべきことが見えてきました。
また、その看護には、利用者をアセスメントする視点・知識、そして状態の判断においては、指標となる数値や様々な所見を合わせた総合的な判断が重要であることを学びました。

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利用者の適切な通院や入院件数の減少へ貢献

研修後、研修で学んだ知識・技術を利用者の「生活を軸」に生かすことを大切に活動しています。例えば、がんや慢性疾患の増悪時には、臨床推論やアセスメント力を活用して状態を見極め、施設で生活を続けられるかどうか、本人や家族と話し合います。研修後は、先を見通して自信をもって相談に応じられようになりました。また、急変時には、状態のアセスメントを効率的に行い、医師にもポイントを押さえた相談や報告ができ、対応が迅速になりました。
こうした活動により、利用者の通院や入院件数が減少してきました。予防的な関わりや、受診の判断が的確になったこと、また、重症化予防できることが有用なのだと考えています。特養で常駐でない医師とチームを組み、医療を提供するには、看護師には状態を的確に捉え、相談できる能力が求められます。研修で視点が広がり、高齢者の声にならない容態の変化に、論理的思考で「気付く」ことが可能となりました。
まだ、特養などで活動する研修修了者は少ないですが、高齢者が住み慣れた地域で生活できるよう、ぜひ多くの方に研修を受講してほしいと心から願っています。