【2区分】
3. 呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
8. ろう孔管理関連
【3行為】
気管カニューレの交換
胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
膀胱ろうカテーテルの交換
地域のニーズと利用者のニーズに応えるために
【施設の概要】
自施設は茨城県にある社会医療法人恒貴会の病院が設置主体の訪問看護ステーションです。看護師が10名所属し、利用者は約140名です。医療保険の利用者が6~7割と多く、医療依存度が高く、医療的ケアの必要な小児にも訪問しています。同一法人のクリニックがかかりつけの利用者が多いですが、その他のかかりつけ医は12カ所、県外も含めた大学病院等からも指示をもらっています。
地域の医師の高齢化も進み、閉院もある状況です。地域の医療提供体制を見ると、医師の緊急時対応は一人体制で、医療依存度の高い利用者を見ている場合もありました。また、利用者側を見ても、医師が週に1回しか訪問しないケースでは褥瘡(じょくそう)のデブリードマンができず、治りが遅延するなどの経験をしてきました。このように、地域のニーズと利用者のニーズを考えて、特定行為研修が活用できるのではと思っていました。制度が検討されている段階から情報収集をして、制度創設と同時に最初の看護師を研修に派遣することにしました。
特定行為研修制度の活用に向けたプランと対応
最初の派遣者を考えるときには、地域のパイオニア的な看護師になると考えていたので、後に続く人を引っ張っていけて、また地域の医師等からの信頼も得ている看護師をと考えて人選しました。
組織として研修に送り出すために、法人内で特定行為研修のメリットや活用可能性を説明し、承認を得ました。そして、研修に出る前に、研修を受講する看護師や病院などとも話し、修了後はどういう役割を担うのかを決めて送り出しました。
研修は出勤扱いとし、実習中は勤務調整を行いました。研修機関が勤務との両立を考慮したプログラムを立案しているため、連続した実習は最長で5日間でした。研修に送り出すときに、研修と勤務の両立が大変では、という質問もよく受けますが、勤務調整は全然負担にならなかったです。研修中は加えて、eラーニングも集中して行える環境となるよう配慮しました。
修了後の活動開始に向け、この地域で初めての特定行為研修修了者なので、丁寧に周知活動を行いました。まずかかりつけ医の医師へ個別で説明をし、さらにそれ以外の医師へも、何を学んだか何ができるかをリーフレットにして周知活動をしました。医師のほか、診療所の事務職員やケアマネジャー会など関係者への周知も行いました。実際に特定行為を始める際は、安全に安心して実施できるための体制を整備しました。修了生が戻ってきて活動を始めるにあたり、最初に確認したのは、今加入している賠償責任保険で特定行為の実施がカバーできるか、ということです。修了者も、行く前より戻ってきてからの方が、医療安全について慎重になっています。
そして医師との協働体制の構築です。最初は見学、次は同行で実施など段階を踏んで実施できるよう、医師へ依頼・調整を行いました。その後のバックアップも医師との関係性が大切だと思います。さらに遠隔地の医師の指示でも行えるように、医師へ相談・調整を行いました。その際には、特定行為の実施の実績や安全体制の説明を行い、実際の手技の確認などをしていただき、実施に結び付けていきました。
修了者の活動の実際と効果、今後のビジョン
修了者は通常の訪問看護に加えて、別枠で特定行為の必要な利用者への訪問を行っています。特定行為を実施するだけでなく、関連して学びを得ているので、観察するポイントや管理についてもしっかり押さえているので、緊急事態になる前に防げています。利用者と医師からはよい反応が返ってきており、「やはり必要だ」と実感しています。例えば、腸ろうのあるお子さんは交換のために遠方まで出掛ける必要があり、緊急時でも痛みを我慢して3時間かけて受診していましたが、今では緊急時に在宅で交換できるようになりました。
また、共通科目でのフィジカルアセスメントなどの学びを訪問看護ステーションのスタッフや地域の看護師にも波及して、全体的な質の向上を図っていきたいと考えています。医療的ケアが多い利用者には、特定行為研修の共通科目で学ぶ内容が非常に必要に役立っています。修了者には地域での研修なども継続してやっていってほしいと思っています。 また、医療の変化に伴って、訪問看護ステーションも情報や知識をアップデートすることが必須です。そこへの役割も期待しています。加えて、修了者は他の看護師や看護学生のロールモデルになっています。地域のニーズに応じてステーションも変化し続けていく必要があると思っており、特定行為研修修了者には期待をしています。